医療機関では、原因や症状に合わせて専門的な検査・治療が可能です。市販の育毛剤やセルフケアだけでは十分な改善が見られない場合や、急激な抜け毛・薄毛があるときは、医師に相談してみると良いでしょう。以下では、代表的な治療法をご紹介します。
内服・外用薬
医療育毛で髪を増やして育てる
1. 内服薬(飲み薬)
1-1. フィナステリド
作用機序: 5αリダクターゼのタイプIIを阻害し、テストステロンからジヒドロテストステロン(DHT)への変換を抑制します。DHTは脱毛を促進するホルモンであり、その生成を抑えることで脱毛を防ぎます。
適応症: 主に男性型脱毛症と前立腺肥大症に使用されます。
副作用: 性欲減退、勃起不全、射精障害などの性機能障害が報告されていますが、多くの患者では一時的です。
用法用量: 通常、1日1回1mgを経口摂取します。
1-2. デュタステリド
作用機序: 5αリダクターゼのタイプIとタイプIIの両方を阻害し、DHTの生成をより強力に抑制します。
適応症: 主に男性型脱毛症と前立腺肥大症に使用されます。
副作用: フィナステリドと同様に、性欲減退、勃起不全、射精障害などの性機能障害が報告されています。
用法用量: 通常、1日1回0.5mgを経口摂取します。
比較
効果: デュタステリドは5αリダクターゼの両タイプを阻害するため、DHTの抑制効果がより強力と考えられています。
副作用: 両薬品とも副作用は類似していますが、デュタステリドの方が若干副作用の発生率が高いとの報告もあります。
選択基準: 患者様の症状や副作用への感受性に応じて、適切な薬剤を選択します。
フィナステリドとデュタステリドは、男性型脱毛症(AGA)の他に前立腺肥大症の治療にも用いられる薬剤です。
効果が現れるまでに通常、数ヶ月かかるため経過観測が必要となり継続的な使用が求められます。
1-3. ミノキシジル内服
- 作用: 血管拡張作用により頭皮の血行を促進し、毛母細胞へ栄養を届けやすくします。
- 注意点: 心血管系に影響を及ぼす可能性があるため、医師の管理下で使用する必要があります。日本では外用薬が中心ですが、一部クリニックでは内服薬を処方しているケースもあります。
1-4. スピロノラクトン(抗アンドロゲン薬)女性向け
- 作用: 男性ホルモン(アンドロゲン)の作用を抑制する。女性の薄毛(女性型脱毛症)や多毛症の治療などに用いられることがあります。
- 注意点: 血圧や電解質(特にカリウム)などを定期的にモニタリングする必要がある場合があります。妊娠中の使用は避けるなど、利用には医師の判断が必須。
1-5. 低用量ピル 女性向け
- 作用: ホルモンバランスを調整することで、ホルモン由来の脱毛・薄毛にアプローチすることがある。
- 注意点: 血栓症のリスクなど、服用にあたっての制限や副作用もあるため、医師と十分に相談が必要。
※ 男性のAGA治療に用いられるフィナステリド(プロペシア)やデュタステリド(ザガーロ)は、女性には基本的に処方されないか、非常に限定的です。妊娠中や妊娠を希望する女性には特に避けられることが多いです。
2. 外用薬・外用治療
2-1. ミノキシジル外用(リアップなど)
- 作用: 血管拡張により頭皮の血流を改善し、発毛を促進する。
- 特徴: 医療機関でも処方されるほか、市販の女性用育毛剤としても一般的。医療機関で処方される場合は、濃度の高いものが使える場合もある。
- 注意点: かゆみやかぶれなどの刺激症状が出る場合は、すぐに医師・薬剤師に相談する。
2-2. 外用ステロイド・抗炎症剤
- 目的: 炎症がある場合に頭皮の赤みやかゆみを抑え、頭皮環境を整える。
- 注意点: 長期・大量の使用は副作用リスクが高まるため、医師の指示のもと必要最低限で使用。
3. 注入・再生医療系治療(メソセラピー・PRP療法など)
3-1. メソセラピー(成長因子注入療法)
- 内容: 頭皮に直接成長因子(FGFなど)やビタミンなどの有効成分を注入して、毛母細胞・毛包を活性化させる治療。
- 特徴: 個人差はあるものの、外用薬や内服薬と併用して効果を高めるクリニックが多い。
- メリット: 成分を直接頭皮に届けるため、短期的な効果を期待できる場合がある。
3-2. PRP(多血小板血漿)療法
- 内容: 自分の血液から血小板を多く含む血漿を抽出し、頭皮に注入する。血小板由来の成長因子が髪の成長を促進するとされる。
- 特徴: 自己血液を使用するため、アレルギーリスクが低い。
- デメリット: 保険適用外の自由診療が多く、比較的費用が高額になりやすい。定期的な通院が必要になる。